先日、がん闘病中の従妹の実家に行ってきた。
闘病中と書いたが、彼女は「最も強い抗がん剤」を使用し、それでもなお腫瘍の勢いが衰えなかったので治療をストップしている。
詳しいことはわからないが、恐らくこのまま家族が看取ることになるのだろう。
僕の顔を見るなり、従妹のおばちゃんとおっちゃんは「来てくれてありがとう」と涙を流した。
どちらも定年前の歳だ。
やつれきった顔と、年不相応な細い腕が、「家族で看取る」ことの大変さを物語っていた。
リビングで、従妹はベッドに横たわっていた。
身体には、点滴用の管がたくさんまとわりついている。
事前に写真で見ていたので心の準備はできていたが、それが無かったらどうなっていたかわからない。
僕の脳内にある彼女の姿は、そこには無かった。
最後に従妹に会ったのは3年前だった。
その時はいつもと変わりなく元気だった。
聞くところによると、この3年間本当に色々あったようだ。
これについては、色々思うことがあるので別の機会に話をしたい。
従妹は僕の顔を見ると、ゆっくりと手を挙げた。
そして、表情のない顔で「ごめん」と言った。
何を謝っているんだ。
こんなことになって?心配をかけてしまって?
彼女は表情を失っていたが、人の判別や会話などはまだきちんと出来ているようだった。
喉が渇いたや、気分が悪いといった意思表示もできていた。